世界の再生可能エネルギーと電力システム経済・政策編 (NextPublishing)

世界の再生可能エネルギーと電力システム経済・政策編 (NextPublishing) の詳細

「世界の再生可能エネルギーと電力システム経済・政策編」は今年読んだ本の中で3本の指に入る名著だと思いました。先日の電力システム編も本当に勉強になりましたが、こちらのほうが、日本が今できていないこと、これからやらなければならないこと、日本における政策決定根拠の甘さ、全体最適の考え方の欠如、バックキャスティング手法の欠如が見事に浮き彫りにされています。私は経済学は、ベストセラー本を数十冊読んだくらいの知識しかないのですが、それでも経済学を学ばれている安田先生は小難しい理論を小学生でもわかりやすいようにかみ砕いて説明してくださっています。大半の日本のテレビ、ネット、評論家によって言われている「常識」に近い状態で語られている言説が実はほぼ全く世界の現実の調査もせず、断片データからくるイメージだけで語られているということもよくわかりました。過去、およびこれから一言でも再生可能エネルギーについて批判、論評したことがあるかた、する方に関してはこの本を読んでおかないといつかどこかで大恥をかくことになることは間違いありません。著書の中で「便益」という言葉が頻繁に出てきます。日本ではメディアでもめったに使われませんが、印象的には「恩恵、メリットだろう」と想像される方が多いと思います。しかし、より具体的には「費用」の反対語であり、明確に貨幣価値を含んでいる言葉だそうです。要するに費用が「それをやるには何円かかる？」ということに対して便益は「それをやることによって何円相当のメリットがある」という具体的な額を示す言葉だということです。利益が「商売をやったことで何円もうかったか」を示す具体的な額を示す言葉であることと同様といえばいいかもしれません。日本では再生可能エネルギーのコスト面ばかりが強調されますが、この便益がほぼ全く議論されずにきました。だからこそ、これだけ遅れをとってしまったということが、改めてよくわかりました。また、特にEUでは便益もトータルで考えた上で企業も政府も計画を立てているそうです。だからこそこれだけ急速に普及してきたわけです。また、前々から感じていましたが、いかにドイツをはじめとする中央以北の国々がエビデンスと合理性に基づいて政策決定されているのか。日本がその逆であるのかも痛感しました。ほかにも紹介したいことがたくさんありすぎるのですが、本を折った個所だけでも27か所あり、しかもそれぞれが一行で紹介できるような内容ではありません。また私の稚拙な表現によって、元の先生の分かりやすい文章がくずれてしまうのは本意ではありません。最低でも役所勤めの方と、企業経営者は現在の世界の潮流と、日本がいかに「トランプのごとく」世界の趨勢からかけ離れた政策をとっているのかを知っておく必要があると思います。