AI時代の進路の選び方 「文系？」「理系？」に迷ったら読む本 (YA心の友だち)

AI時代の進路の選び方 「文系？」「理系？」に迷ったら読む本 (YA心の友だち) の詳細

文系と理系。実はこのダイコトミーはプラトンとアリストテレスの論争に遡ります。教育学的には、プラトンの合理主義と自然に就く教育、アリストテレスの社会的動物論と社会に生きる教育というわけですが、ちょっと考えてみると同じ人間が両方の営みをしているのではないでしょうか。だから、この2つをかっちりと分けてしまい、各内部で専門化が進むことは、ある種の分裂的不幸をもたらします。当方も経験があるのですが、最初の大学受験の際はある意味無目的に文系でチャレンジし、東大を含むいくつかの上位大学文系学部に受かりました。卒業後いったんはマスコミに入りましたが、5年で退職し、その後理科系に転身。東京理科大の数学科（夜間）に入り、2年ほど数学教育を学んだのち、今度は東大理学部の生物学科に再入学し、やはり2年ほど解剖学を含む人類生物学を履修。ひいては群馬大医学部学士編入学1次試験にパスしました。ところで、日本では明治期に文理の別をはっきりと分けてしまったため、各専門家をスピーディーに養成できるというメリットとは裏腹に、独りでは両立不可能なまでに専門化が進んでしまいました。当方は因みに東大教養学部教養学科（文化人類学）の卒業ですが、東大前期課程の教育はまさにその矛盾を衝く形で進み、人間学をベースとした真の教養獲得に向けた教育プログラムが組まれています。そこでは理想的には理系学生も文系の学問に接し、また文系学生も理系の学問に接し、ある程度を吸収するわけで、いわゆるバランス志向を重視しています。そこで、当方は本書の意図を汲んで提言します。受験生諸君はできれば高校段階まで文理両方の教科・科目に触れつつ、あまり早くに一部教科・科目を切り捨てないでほしいということです。かつて先人は文系でもすべての理系科目を学んでから受験したようですから、推して知るべしです。なぜなら、真に豊かな知の組み替えというものは、両方学んでいないと難しくなるからであり、学問全体の発展性もそれにかかっているからです。仮に東大が便宜上入学時の文理を分けつつも、進学振り分けのぎりぎりまで両方の履修を学生に課すわけも、その点からご理解いただけるものと思います。そんな向きはとりあえず本書をご一読になり、文理を分けたり、分けなかったりすることのメリット・デメリット双方について思案したのち、新時代におけるリベラルアーツ（教養）のあり方についても考えてみられては、と思います。